J.PRESS OLD ⇔ NEW

『J.PRESS』と言えば・・・と聞かれると、

まず最初に思い浮かべるのは何でしょうか。

『アメトラ』『1型』『AUTHENTIC』・・・。

色々ありますが、忘れてはいけないのは、

そうです!!『赤パイピング』です。

ブランドのアイコン的存在で、

『J.PRESS愛好家』にとっては、もはや常識とも言える見返しに施された『パイピング』。

『スーツ』や『ブレザー』、『ジャケット』。『スラックス』等の一部のモデルに施された『赤パイピング』について書いてみようと思います。

 

『赤パイピング』とは・・・

『赤パイピング』とは・・・、

 

J.PRESSの『定番モデル』である『AUTHENTICモデル』通称『1型』モデルの

上着見返し部分、組下スラックスの腰裏部分に施された、普遍性の証として愛され続けてきました。

 

『定番紺ブレザー』、『定番スーツ』、『定番スラックス』等、

『赤パイピング』がついているアイテムは、流行りに左右されること無く、

正しいメンテナンスを施すことで長く愛用することが出来るという『TRAD』の本質的な部分を表現してくれている存在、『間違いのない存在』とでも言いましょうか。

サイジングも変わることが無いので、買い替えの際にも『赤パイピング』を目印に商品を選ぶお客様も少なくはありませんでした。

 

『前に買ったJ.PRESSのスーツ。ほら、あの~、赤の線の入っている・・・』

なんて言う会話もJ.PRESSを扱っていると良く見る光景です。

また、『若いころ、赤のパイピングが入っているブレザーが欲しくてね。でも、その当時はお金がなかったから、いつかはあれを買うんだって思いながらずっと我慢してきたんだ、その思いがやっと叶ったよ』と言う、十数年間の憧れと共にご来店をされるお客様も沢山見て参りました。

J.PRESSにとっての『赤パイピング』はブランドの『アイコン的存在』であり、また『”満足”を保証する証』、必要不可欠な『パーツ』でもあるのです。

 

『TRAD』とは『TRADITIONAL STYLE』の略称のことで、

【流行に流されず、受け継がれてきた伝統的・国民的なファッション】を意味します。

変わりゆく時代の中で『変わらないこと』の良さや『完成形』とされるものを受継いでゆく大切さ。

それこそが『TRAD』の持つ本質であると思います。

 

多くの『メーカー』や『ブランド』は、流行に流されていく(むしろ無理やり流行を作り出し、またそれに追随する形でただただ流されていく者も多数いる)中で、J.PRESSは頑なに『AUTHENTICモデル』と言う定番スタイルを守ってきました。本当に凄いことだと思います。

 

しかしながら、80年代の『TRAD』全盛期に、当時20代・30代だったJ.PRESSの愛好家達は、

今や50代・60代となり、数年十数年後には定年を迎え、スーツを着なくなると言う人が少なくないと言う問題を抱えておりました。

近年の少子化も少なからず影響し、ブランドの卒業(あるいは購入頻度の低下)を補えるだけの若年層のファンを獲得出来ていない状況でした。

 

その為『J.PRESS』は、定番モデルの(サイジング)見直しを行いました。

『赤パイピング』の定番モデル『AUTHENTICモデル』の、

基本的な仕様(3つ釦段返り、フックベント、7mmステッチ、ナチュラルショルダー、フロントダーツなし等)は、そのまま引き継ぎ、『肩幅』・『身幅』を狭くし、『着丈』を短くした『NEW AUTHENTICモデル』を『新定番』モデルとして位置付けました。

また、上着のサイジングに呼応する形でパンツも股上を浅くし、渡巾や裾巾も細い『新定番』を作り出しました。

上着からはゆったりとした『胸廻り』、『BOXシルエット』は無くなり、

パンツからは『深い股上』、ゆったりとした『渡巾』、『裾巾』が無くなりました。

同じ『赤パイピング』であっても、『見た目』、『着用感』の異なる『”新”定番』モデルです。

 

(以上のことから、既製品の定番モデルは、全て『NEW AUTHENTICモデル』に代わり、事実上『AUTHENTICモデル』は後述する一部を除いて完全に無くなってしましました。)

 

このことについては賛否両論、色々な意見があります。

 

もちろん作り手側にも、長年築いてきた・受け継いできたもの、変えてこなかった(正確にはミリ単位での変更はありましたが)ものを変えてしまうことに対して、壮絶な悩みや葛藤があったと思います。今までJ.PRESSを支持してきたお客様に対して満足を提供することが出来なくなるのではないのだろうか。ブランドの存続の為、新しい世代のファンを獲得していく事と、今まで支えてきてくれたファンを一番大切にすることと言う相反する2つ思いの板挟み状態にあったと考えます。

苦悩の末、ブランドを存続して行くことが一番だという結論に至りました。 

 

約10年前に流行した『美脚パンツ』登場以後、紳士服業界にもスリム化・タイト化の波が押し寄せ、若年層にはピッタリとしたサイジングが当たり前となりました。

その為、次の世代にブランドを受け継いでいく為には、避けて通る事の出来ない『モデルチェンジ(新定番の設定)』だったのだとも思います。

 

30代の次の世代のJ.PRESS愛好家を増やしていく為に、

ブランドの企画(デザイナー、MD等)に30代の若手を起用し、

新しいJ.PRESSを構築していくことになりました。

約5年の年月と10シーズンの中でサイジングの微調整を行い、

やっと『新しいカタチ』が出来上がったところです。

『TRAD』は進化する。そんなところでしょうか。

 

実際、新しい世代において、

今まで『J.PRESS』というブランドを知らなかった若者や、

父親世代のブランド(関西弁で言うところの『おっちゃんブランド』)と認識をしていた若者にも

認知度が高まり、そして110年以上も続く伝統あるブランドに興味を持ち、選択肢の一つとして加えられてきています。パブリシティでの露出も効果が出ていると考えます。

 

もちろん『”新”定番』モデルは、今まで『AUTHENTICモデル』を愛用頂いているお客様にも、着て頂ける(移行して頂ける)様にと計算・設計をされたサイジングではあります。

しかしながら『AUTHENTICモデル』でないと嫌だと言うお客様も多数見受けられます。

『こだわり』それこそがファッションの醍醐味であり、『変わらないこと』を愛する『TRAD』ファンにとっては重要なポイントでもあります。

 

当店でも『AUTHENTICモデル』を求めて来店されるお客様が多数おられます。

 

そこで、J.PRESSは『パターンメイド』と言う方法で『AUTHENTICモデル』を、お作り頂くことが出来る様にしています。仕上りまで約3週間のお日にちが掛かりますが、『AUTHENTICモデル』通称『1型』モデル(いつもの『赤パイピング』)にてお作りを頂くことが出来ます。

約70種類のスーツ生地、約40種類のジャケット生地、約15種類のブレザー生地、ベストやスラックスにも対応をしている生地が多く、充実したラインナップとなっています。

 

10年ぶりにJ.PRESSの『紺ブレザー』が欲しいという方も、既製品には同じもの『AUTHENTICモデル』はありませんが、『パターンメイド』での対応が可能です!!

『J.PRESSはサイズが小さくなったから合わなくなった』なんて諦めないでください!!

 

いつもの『赤パイピング』が無くて困っている方、

『AUTHENTICモデル』愛好家の方、

いつもの『赤パイピング』あります!!

是非、当店までご一報ください。

ご希望にお応えします!!

 

いつもの『赤いパイピング』(AUTHENTICモデル)は『コチラ』を御覧下さい。

(他の生地モデルも多数御座います。お問い合わせを頂きましたらご案内をさせて頂きます。)

お問い合わせは『コチラ』までお願いします。

 

110年以上も前にアメリカで発祥したブランドの、

何十年も前に完成をした『今日でも愛され続けるサイジング(AUTHENTICモデル)』が、

(『パターンメイド』と言う形を変えてではありますが)存続をし続けている事に『TRAD』の魅力を感じます。

 

表題にJ.PRESS OLD ⇔ NEW』と付けましたが、これは『AUTHENTICモデル』の新旧ではありません。

『J.PRESS』と言うブランドの歴史の重み・深さについて書くことが出来ればと思い付けました。

『NEW AUTHENTICモデル』は、あくまでも『NEW』であり、

『AUTHENTICモデル』は今までも、そしてこれからもずっと『AUTHENTICモデル』であるべきなのです。

決して『OLD』ではなくて・・・

 

余談ですが、J.PRESSでは過去に『緑パイピング』も存在していました。

その話はまた別の機会にでも。

 

こういうことを説明することが、専門店ならではなのかなと思い書くことにしました。